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-追憶3- 変わらない街と変わりゆく人々

-これは、まだパワースクロールもアーティファクトも無い時代の頃のダイの日記です。-
 
冒険者であるならば、冒険で得た戦利品を金に換えるための道具屋に足を運んだことはあると思う。
そして、ほとんどの場合は行きつけの道具屋があるのではないだろうか。
無論、俺も例外ではなくヴェスパーの町はずれにある道具屋の常連になっている。



この日も、先日デスパイスで得た宝石や魔法のアイテムを処分するために店にやってきた。
一通り、アイテムを売り払って戻ろうかとルーンブックを広げたのだが・・・。
ふと、店の外を見ると一匹の犬が歩いていたのに気が付いた。



もちろん、珍しい光景ではないのだが・・・。
なんとなく犬の頭をなでてみる。
いつもは店に直接リコールの魔法で訪れて、帰りもリコールで飛ぶのだが、久しぶりに店から出たついでにヴェスパーの街を歩いてみようと思い立った。

まだ俺が駆け出しの頃、このフェルッカのヴェスパーの街を拠点にしていた時期があった。
冒険者として稼げるようになるまで、この街には随分と世話になっていたのだ。



ヴェスパーの銀行前。
昔は、ブリテンほどではなかったが人が集まっていて賑やかだったこの場所。
フェルッカであるからか、今はほとんど人を見ることはない。
やっとスケルトンを倒せるようになったころ、戦利品である骨鎧を銀行で整理して袋に詰めてこの場所で売っていたことがある。
1セットで100GPで売っていたか、それとも150GPだったか・・・もう、そんなことも忘れてしまったが。



街の中央にある裁縫屋。
まだ冒険者を目指していたころ、俺は魔法の能力こそ少しばかりあったものの、秘薬を買う金が無く、剣もほとんど握ったことすら無かった。
冒険でモンスターを倒して金を稼ぐなんて夢のまた夢の話で、むしろ冒険に行くための軍資金を稼がなければならないような状況だった。
そんな俺がアルバイトをしていたのが、このヴェスパーの裁縫屋だった。
銀行前で捨てられていた、空鞄などを売って幾ばくかの金に換え、そして材料を仕入れて糸を紡ぎ、布を織る。
出来た布を簡単な帽子に作って、それを卸してわずかばかりの収入を得ていたのだ。
スケルトンを倒せるようになるまで一ヶ月ほど、アルバイトを続けていただろうか?
そうしていると不思議なもので、だんだんと裁縫の腕前も上がり、最後にはファンシードレスなんてしゃれたものまで作れるようになっていた。

・・・もっとも、今ではすっかりやり方を忘れてしまって一番簡単だった帽子すら作れるか怪しいものではあるが・・・。



裁縫屋のすぐ近くにある戦士ギルド。
裁縫屋でバイトを終えたあとに必ずここに通っていた。
ダミー人形に向かって、なけなしの金で買ってきた剣を一心不乱に振っていた覚えがある。
剣術が上がらなくなったら、次の日からはクォータースタッフを買ってきて棒術を。
それも上がらなくなったら槍を買ってきて・・・といったように一通りの武器を試していた。

・・・久しぶりにダミー人形を殴ってみる。
昔、剣での会心の出来だと自分で思っていた揺れより、遥かに大きな揺れ方をした後にダミー人形は、ゆっくりと元の位置に戻っていった・・・。



カウンセラーホール。
昔もここには多くの人が集まっていた。
ホールの前の路上でイベントなども行われた記憶がある。
俺もここに集まっていた冒険者に、いろいろなことを教わっていた。
その中には、今思い出しても恥ずかしくなるような質問なんかもたくさんあった。
実際には、そうして自分が覚えてる以上に、恥ずかしい質問をしていたのだろう・・・。



町外れにある宿屋。
戦士ギルドでの修行を終えたあとは、必ずここへ戻ってきたものだった。
この部屋のことは、今でもよく覚えている。
眠りにつくまえに、今日は裁縫でどれぐらい稼げたとか、武器の扱いがどれくらい上達したか、など必ず反芻していた。

今から考えれば、俺のやり方は迂遠なものではあったが、当時は一流の冒険者への道を邁進しているものと疑っていなかった。
裁縫をして金を得て、僅かばかりの秘薬とポーションを手に町外れの墓場までスケルトンを倒しに行く。
そんな他愛も無い、繰り返しが大冒険だったのだ。

そして、冒険者となって3年の月日が過ぎた。
久しぶりにヴェスパーの町を歩いて、人が少なかったせいもあるだろうが昔を思い出してしまった。

あの頃は、スケルトンを倒すのすら大冒険だったが、今はどこへだって行くことが出来る。

あの頃は、一人で夢を見ることしか出来なかったが、今は多くの出会いと別れを繰り返して、命を預けれるような仲間も居る。

ヴェスパーの町並みは、あの頃とまったく変わっていないが、俺はあの頃とは大きく変わっている。

・・・あの頃の俺よ、今の俺は君が服を仕立て、ダミー人形を叩きながら、思い描いていたような男になれたのだろうか?

その答えを得るために、俺は今もブリタニアを歩いているのかもしれない・・・。

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